実家がゴミ屋敷に?放置するリスクと親を説得する方法について解説
近年、高齢化社会の進展や核家族化によって「実家がゴミ屋敷になっている」という問題が深刻化しています。ゴミ屋敷は、衛生面や安全面だけでなく、ご近所トラブルや家族関係の悪化など、さまざまな問題を引き起こす問題です。
しかし、ゴミ屋敷に住む親を説得して片付けさせることは容易ではありません。親にとっては大切な思い出の品や、捨てられない理由がある場合もあるからです。
そこで今回は、「実家がゴミ屋敷になる理由」「ゴミ屋敷を放置するリスク」「実家を片付けるよう親を説得する方法」「清掃業者を選ぶ際のポイントと費用感」について解説します。
この記事がゴミ屋敷問題についての理解を深め、適切な解決策を見つけるヒントになれば幸いです。
実家がゴミ屋敷になる理由
実家がゴミ屋敷になってしまう理由はさまざまです。代表的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
一つずつ、見ていきましょう。
片付けが苦手
一つ目の理由は「片付けが苦手」な性格です。
片付けが苦手な方は大勢います。どうしても片付けがうまくいかず、結果として家の中がますます散らかってしまうという方も決して少なくないでしょう。実家で暮らしている親がそのような方なら、実家がだんだんとゴミ屋敷になっていくのもうなずけます。
ちなみに片付けが苦手な方には、モノを捨てるタイミングが分からない、整理整頓をする習慣が身に付いていない、といった傾向が多く見られるようです。
モノを捨てられない
二つ目の理由として「モノを捨てられない」ことが挙げられます。
誰しも、思い出の詰まった品物はなかなか捨てられないものです。また、貧しい時代やモノが少ない時代を経験してきた高齢者の中には、モノを大切に扱う習慣が身に付いていたり、モノを捨てることに罪悪感を感じたりする方も少なくありません。
とはいえ「いつか使うかもしれない」などの理由でひたすらモノを取っておくのは要注意。身の回りのモノを無差別に溜め込んでいると、いずれは「家の中がゴミだらけ」になってしまいます。
体力がない
三つ目の理由は「体力がない」ことです。
ゴミ捨てや片付けの作業は、意外と体力が必要です。重いモノの上げ下げはもちろん、ゴミ捨て場が家から離れている場合や、ゴミを捨てに行く際に坂や階段の上り下りしなければならない場合も、体力的な負担は大きくなります。
特に高齢者や、関節痛や腰痛といった持病を持っている方の場合、このような体力面の問題が原因となって、家がゴミだらけになってしまうケースが少なくありません。
気力がない
四つ目の理由は「気力のなさ」です。
具体的には「なんとなくやる気が出ない」「次のゴミの日でいいや」といった、投げやりな気持ちが挙げられます。気力が出ない根本原因は孤独や退屈、健康面や精神面の問題などです。
このような方には、ひとたびゴミ屋敷になると余計におっくうに感じてしまう傾向があります。結果として、ますますゴミ屋敷化が進行してしまうのです。
精神的な疾患
五つ目の理由は「精神的な疾患」です。
精神的な疾患は、単なる「やる気がでない」こととは違います。認知症やアルツハイマー、うつ病、不安障害など、本人にもどうにもならない疾患が原因で掃除やゴミ捨てができなくなり、結果として家の中にゴミが溜まってしまうのです。
なお精神的な疾患のなかには、外見では判別しにくいものもあります。表面的には「片付けが苦手」「モノを捨てられない性格」「単に気力がない」ように見えても、実は疾患というケースは少なくありません。
ゴミ屋敷を放置するリスク
ゴミ屋敷は単なる美観の問題ではありません。適切に対処しないとさまざまなリスクが生じる可能性があります。ここではその代表的なものとして、以下のリスクに注目します。
これらも、一つずつ見ていきましょう。
病気やケガの原因になる
ゴミ屋敷は一般に衛生状態が悪く、カビや細菌が繁殖したり、害虫やダニなどが発生したりしやすい環境です。こうした有害物質は、アレルギー症状やぜんそく、皮膚炎などを引き起こす可能性があります。特に高齢者は免疫力が低下しているため、深刻な健康被害につながる可能性があるでしょう。
また、散らかった床には転倒の危険も潜んでいます。ゴミの山に足を取られてケガをするなど、不意の事態が起こりかねません。特に、高齢者や視力や体力が衰えている方にとってゴミ屋敷は非常に危険な場所です。また火災などの緊急事態が発生した場合には、避難経路がさえぎられて脱出できなくなる恐れもあります。
モノを紛失しやすくなる
ゴミ屋敷では大切なモノがゴミの中に埋もれ、いつの間にか行方不明になってしまうリスクがあります。これによってストレスが増え、精神的な健康を損ねる原因にもなるでしょう。大事な書類や通帳、身分証明書といった貴重品を紛失することで経済的な損失にもつながりかねません。
また、テレビやパソコン、携帯電話といった通信機器がゴミに埋もれてしまった場合、外部との連絡がすぐに取れなくなり、非常時に適切な支援が受けられない恐れもあります。
ご近所とトラブルになる
ゴミ屋敷は地域の美観を損ないます。また溜まったゴミからは生ゴミなどの悪臭が漂ったり、一部のゴミが飛散するリスクもあります。このような状況が長期化すると近隣住民から苦情が噴出し、社会的な孤立を深めてしまう原因になります。
最悪の場合は警察を呼ばれる、訴訟を起こされる、さらには暴力沙汰などの事件に発展するリスクもあるでしょう。
火事が発生しやすくなる
ゴミ屋敷の多くは、紙くずなどの可燃物が多く堆積しています。このため火事の発生と、それによる死亡リスクが非常に高い状態といえるでしょう。
総務省消防庁が公表している「令和5年版 消防白書」によると、住宅火災による死亡事故の三大原因は以下の通りです。
- 電気器具(配線)…12.4%
- たばこ…12.0%
- ストーブ…11.6%
引用:令和5年版 消防白書 第1章災害の現況と課題 第1節火災予防より
もちろん、これらが火災の原因になるのはゴミ屋敷に限った話ではありません。ですが、
といった状態では火災のリスクはさらに跳ね上がることでしょう。いったん出火したあとの「延焼スピード」も早いと思われます。またゴミ屋敷では通路がふさがれ、火災発生時の脱出も困難です。
実家を片付けるよう親を説得するには
ゴミ屋敷問題は一朝一夕には解決できません。まずは最初の一歩として、実家に住んでいる親を説得し、協力を求める必要があります。ここでは説得の成功につながる、以下のポイントを紹介します。
- まずは理由を確かめる
- リスクやデメリットを説明する
- 親を責めたり否定したりしない
- ネガティブなワードを使わない
一つずつ見ていきましょう。
まずは理由を確かめる
まず、なぜ家がゴミ屋敷になってしまったのか、その理由をしっかりと理解することが重要です。上で説明した通り、実家がゴミ屋敷になる理由はさまざまです。親と対話し、直接話を聞くことで、片付けが苦手なのか、モノを捨てられないのか、体力や気力がないのか、精神的な問題を抱えているのかなどをある程度把握できるでしょう。
なお「精神的な疾患」については、専門医の診断がなければ正確なことがわかりません。かといって強引に診断を受けさせたりするのはNGです。親の気持ちや感情を尊重しつつ、可能な範囲で理由を確かめるようにしましょう。
リスクやデメリットを説明する
ゴミ屋敷を放置することによるリスクやデメリットを、具体的に説明しましょう。病気や怪我、モノの紛失、ご近所トラブル、火事の可能性など、さまざまな問題が起こり得ることを理解してもらうことが大切です。
説明の際は、脅したり威圧したりするのではなく、親の健康と安全面を第一に考えているという態度が欠かせません。具体的な事例を交えつつ、冷静に状況の深刻さを伝えることが重要です。
親を責めたり否定したりしない
「なぜゴミ屋敷にしたの?」「こんな生活は情けない」など、親を責める発言は絶対に避けるべきです。ゴミ屋敷は親自身にとっても頭の痛い問題であり、そこに至る事情も複雑です。非難の言葉は親を傷つけ、反発心を生むだけでなく、親子の信頼関係を損なう恐れもあります。
親を励ますように、前向きな言葉をかけましょう。「今から変えていけば、きれいな家に住めるよ」「一緒に頑張ろう」など、親の気持ちに寄り添って対話しながら、ゆっくりと説得していく姿勢が大切です。
ネガティブなワードを使わない
説得の際は言葉選びも非常に重要です。「汚い」「臭い」「危険」といったネガティブな言葉多用すると、親は反発してしまう可能性があります。「スッキリする」「快適になる」「安心できる」など、ポジティブな言葉を使って、片付けのメリットを強調しましょう。
たとえば「ゴミを捨てないと危険」というより、「不要なモノを片付けると安全」と表現する方がポジティブです。言葉が与える印象も考えながら、親が自ら進んで行動したいと思えるような環境を作っていきましょう。
無理な説得は逆効果になることも
説得は必ず成功するとは限りません。ゴミ屋敷をなんとかしようと焦るあまり、無理な説得をしてしまい、かえって親の態度を硬化させてしまうこともあります。そのようなときは以下の点に留意してみてください。
- いったん距離を置く
- 親戚や友人などに相談する
- カウンセラーなどに相談する
こちらも、一つずつ見ていきます。
いったん距離を置く
どうしても話が進まない場合は、いったん距離を置いてみるのも有効です。冷却期間を設けることで、親も冷静になり、客観的に状況を判断できるようになるかもしれません。子どもの側でも、より効果的で心に響く説得方法を思いつく可能性があります。
親戚や友人などに相談する
親と直接対話するのが難しいようなら、第三者に相談してみるのも良いでしょう。親戚や友人など、親と親しい人が間に入ってくれることで、話がスムーズに進んだり、新たな解決策が見つかったりする可能性があります。
カウンセラーなどに相談する
親が精神的な問題を抱えている様子なら、カウンセラーや心理療法士などに相談することを検討しましょう。専門家のアドバイスを受けることで、親の気持ちを理解し、適切な対応方法を見つけることができるかもしれません。
清掃業者を選ぶ際のポイントと費用感
ゴミ屋敷の片付けは、一般家庭の掃除とは比べものにならないほどの労力と専門技術が必要です。ゴミの量にもよりますが、一般には専門の清掃業者に依頼するのが無難でしょう。
ここでは清掃業者を選ぶ際に注目できるポイントと注意点、おおまかな費用感を紹介します。
どんな業者を選べばいい?
清掃業者を選ぶ際には、以下のポイントに注意しましょう。
実績
ひとくちに「清掃業者」といっても専門分野や得意分野はさまざまで、なかには「ゴミ屋敷専門」の清掃業者も存在します。とはいえ専門業者を名乗っているからといって、十分な技術や経験があるとは限りません。
ゴミ屋敷の清掃業者を選ぶときは、ホームページなどにゴミ屋敷の清掃実績が掲載されているかどうかを必ず確認しましょう。
料金体系
1部屋いくらのパック料金、トラック1台あたりの料金など、料金設定もさまざまです。まずはホームページに料金表が掲載されているか、掲載されている場合は料金体系がわかりやすいかに注目しましょう。
無料見積もりや、無料相談ができるかどうかも重要なポイントです。
対応エリア
清掃業者には対応エリアがあります。実家がその業者のエリアに入っているかどうかも確認が必要です。
スタッフ
ゴミの片付けをする際は、スタッフが実家に上がることになります。信頼できそうなスタッフがそろっているかも注目しましょう。できれば実際に会ってみて、信頼できそうな相手かどうかを確認するのが理想です。
オプションサービス
不用品の買取や処分、遺品整理などのオプションサービスを用意している清掃業者もあります。必要に応じて、そうしたオプションを検討してみるのも良いでしょう。
口コミや評判
インターネットなどに掲載されている口コミや評判も参考になります。ただし一つひとつの口コミの内容を気にしすぎるより、できるだけたくさんの口コミなどを見て、トータルで評価するようにしましょう。
依頼する際の注意点
気になる清掃業者を見つけたら、いよいよ依頼(契約)です。その際は、以下の点に注意すると良いでしょう。
契約内容をしっかりと確認する
トラブルを防ぐために、まずは契約内容をしっかりと確認しましょう。少しでも不明な点があれば必ず質問して、疑問を解消させておくことが大切です。
見積もりと実際の料金が異なる場合がある
見積もりはあくまでも目安です。ゴミ屋敷の状態は一軒ごとに違うため、実際の作業内容に応じて料金が変動する可能性もあります。特に追加料金の有無については、事前に確認しておきましょう。
無許可業者には注意する
清掃業の開業に特別な資格や許可は必要ありませんが、発生したゴミを処理する際には、一般廃棄物処理業などの許可が必要になる場合があります。トラブルを避けるためにも、依頼する清掃業者が必要な許可を取得しているかどうかもチェックしておきましょう。
費用の相場
ゴミ屋敷の片付けにかかる費用は、ゴミの量や状態、作業内容、業者、地域などによって大きく異なります。金額の設定も1部屋あたり数万円〜、1軒あたり数十万円〜といった具合に幅があり、相場を提示するのは困難です。
実家のゴミ屋敷がどこにあるのか、どの程度の大きさの家か、ゴミの量はどれくらいかなど、現状に合わせて複数の業者に見積を取ることで「おおまかな相場」が見えてくるでしょう。
あれこれと悩むよりも、まずは動いてみることをおすすめします。
まとめ
この記事では、実家がゴミ屋敷になる理由とその放置がもたらすリスク、効果的な説得方法、適切な清掃業者の選び方を解説しました。
実家のゴミ屋敷問題は、その家に住んでいる「親」だけでなく、子どもである「あなた」や「ご近所さん」など、さまざまな方にマイナスの影響を与えます。ぜひ、専門家の力も借りながらスムーズな解決を目指していきましょう。